
石岡庄寿郎作
作者紹介
秋田県能代市に伝わる伝統工芸「能代春慶塗」を継承した名工であり、その保存と発展に大きく貢献した人物です。1949年(昭和24年)、能代史に残る大火により石岡家に伝わる古文書の原本が失われるという大きな試練に直面しましたが、10代目庄寿郎は復興に尽力し、1957年(昭和32年)には能代春慶塗が国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に指定される礎を築きました。その後も一子相伝により技を受け継ぎ、11代目石岡庄寿郎は伝統技法を守り続けましたが、2010年(平成22年)に逝去。後継者が不在となり、春慶塗の生産は途絶えることとなりました。石岡庄寿郎は、能代春慶塗の歴史を背負い、伝統の灯を守り続けた最後の継承者といえます。
作品紹介
能代春慶塗は、秋田県能代市に伝わる伝統工芸で、透明感のある漆の美しさと木目を生かした意匠が特徴です。この菓子皿もその典型で、木地の自然な風合いを活かしつつ、琥珀色の漆が塗り重ねられることで、木目の美しさが一層際立っています。表面には控えめな彫りが施され、静かな水面に広がる波紋を思わせる趣を漂わせています。形は端正でありながら角にわずかな変化が加えられ、品格と柔らかさを併せ持つ意匠となっています。菓子を盛りつけた際には、和菓子や茶の席を引き立てるだけでなく、器そのものが空間に彩りを添える存在感を放ちます。日常の用と美を兼ね備えた、能代春慶塗の魅力を伝える一枚です。